イベント概要
■日時 2023年2月12日(日)10:00~12:00
■会場 目黒区国際交流協会事務局(目黒区上目黒2-19-15)
■形式 対面式およびオンライン(ZOOM)
■内容
- 10:00-11:00 a.m. 講演
「アフリカ少年が日本で育った結果」
講師:星野ルネさん (twitter: @RENEhosino)
- 11:05-12:00 a.m. 座談会
「日本で暮らす海外ルーツを持つ方々による座談会」
進行:星野ルネさん (twitter: @RENEhosino)
登壇者:イップさん/ナヒードさん/ミヤモトさん/グンジさん
- 質疑応答
■参加人数 計42名
講師/座談会進行:1名(外国人:1)
座談会参加者:4名 (日本人:2 外国人:2)
一般参加者:37名(日本人:34 外国人:3)
(対面式:6 オンライン:31)
Event Outline
■ Time & Date: 10:00~12:00 Sunday, February 12 2023
■ Venue: Meguro International Friendship Association Office
(2-19-15 Kamimeguro, Meguro-ku)
■ Event type: Hybrid (in-person + online over Zoom)
■ Content:
- 10:00~11:00 Lecture
“The result of an African boy growing up in Japan”
Lecturer: Mr. René Hoshino (twitter: @RENEhosino)
- 11:05~12:00 Roundtable discussion
“Roundtable discussion by residents who has foreign backgrounds”
Moderator: Mr. René Hoshino
Speakers: Yipさん/ Nahidさん/ Miyamotoさん/ Gunjiさん
■ Number of participants: Total 42 people
lecturer/moderator: 1
roundtable speakers: 4
participants: 37
~講演会~
◇ 講師:星野ルネさん (twitter: @RENEhosino)
カメルーンで生まれ、3歳の時に母親の再婚を機に来日された漫画家の星野ルネさん。生活や文化が大きく異なる二か国の違いや共通点をユーモアたっぷりにまとめられたご著書『アフリカ少年が日本で育った結果』から、ルネさん自身がピックアップしたエピソードを伺いつつ多様性とは何かを考えました。
【大切なのは直接関わること】
見た目の珍しさから小学校に入るや全校生徒の注目の的になってしまったルネさん。一方で、見物に来る生徒から守ってくれる友達がいました。守ってくれた友達は特別優しかったのでしょうか?ルネさん曰く、見物に来た生徒と彼らはルネさんの認識の仕方が違っただけ。友達はルネさんを保育園の頃から知っていて、外国人だと思って接していませんでした。
「あまり良く知らない人のことを思いやるのは難しい。直接話したり遊んだりして初めて同じ人間だと実感できる。固定観念を持たない子どものように簡単にはできないかもしれないが、大人もスポーツやお祭り、イベントを通じて直接会い、抽象的な“外国人”、“他文化の人”ではなく生きた人間として相手を認識できるようになる経験が必要」
【アフリカの人の血液型は何種類?】
小学生の頃、仲のいい友人から「ルネの血は何色?」と聞かれたルネさん。からかわれているのかと一瞬思ったものの、すぐに純粋な質問だと気づきます。そして肌の色が違うから血の色も違うと思った友人に驚いたそう。大人になり飲み会で血液型占いをしていて「アフリカの人は血液型が何種類あるの?」と聞かれたときも、「4種類に決まっている……いや、この人にとっては常識ではないのだ」と思いなおしたといいます。
「こちらが当たりだと思っていることを当たり前だと思っていない人は世の中に沢山いる。相手が自分と同じ知識を持っている前提で対応すると、誤解や勘違いがあって危険。自分の母親はカメルーン人であるため、日本人のお母さんとずっと家にいる子であれば学ぶことを学ぶ機会が多分無かった。僕が失礼なことを言ったこともあったと思う」
【よくわからないのはお互い様】
海外の方が日本と中国、韓国を混同する様子を見て、「全然違うのになぜ?」と不思議に思ったことがありませんか。そんなときは相手の立場になってみると謎が解けるかもしれません。
「私たちは日本で日本の文化と接しながら生きていて、隣の国との違いもよくわかる。一方で、遠く、例えばアフリカ大陸を見てみたときにナイジェリアとケニアとガーナの違いがどれくらいわかるかというと、“アフリカっぽい”で片づけると思う。でも現地人からすると全然違う。アフリカは広大で、一つの国の中に沢山の民族・部族がいる。同じ理屈で、例えばカメルーンから東アジアを見ると違いが分かりづらい。遠くから見ると民族衣装や箸の使用、建築物など共通しているものが沢山あって似て見える。余程関心が強くないと海の向こうのことはよくわからない」
ルネさんはさらにこう続けます。
「お互いに似たようなことをやってしまっているから、国際的な感覚を持ち、多様性を知るときには人の振り見て我が振り直せというのを意識しておかないといけない。人は自分の足を踏まれている時はすぐ気づくけれど、自分が踏んでいるときは気づかない」
【法とアイデンティティは別】
民族の単一度が高い日本の子供にとって、時にルネさんとの出会いが“自分は何人か”、“日本人とは何か”を考えるきっかけになります。日本人とは何でしょうか?
「法的な国籍と、本人のアイデンティティがどこにあるかは別。“人生が日本と深くつながっている人にはどんな人がいるんだろう?”という視点を持ってほしい。先祖代々日本で暮らしている人、海外にルーツのある日本人、日本で育った外国系の人、海外で暮らす日系人、日本に帰化した人。いろんな人がいろんな風に日本と関わりながら暮らしているというイメージを持つと、社会がどんなふうになっているかを考えやすい」
ルネさんが考える日本人は“自分を日本人だと心から思える人”で、その人がそう思うに至った背景を知ってみようという気持ちを持ってくれればともお話し下さいました。
~座談会~
日本国外にルーツを持つ方々をお招きして日本での暮らしで感じることをお話しいただきました。お一人お一人のバックグラウンドや感じ方は五者五様で「日本人とは何か」「異文化理解とは何か」多様な角度から考えが深まる有意義な時間となりました。
◇ イップさん:香港で生まれ育ち、米国の大学に入学後、米国で暮して来日。現在は大学で勤務。
◇ ナヒードさん:イランで生まれ育ち、日本人の夫と結婚し来日。ペルシャ語翻訳をはじめ様々な方面でイラン文化を紹介。
◇ ミヤモトさん:高等学校に在籍。日本とネパールにルーツを持つ。
◇ グンジさん:高等学校に在籍。日本とドイツにルーツを持つ。
【イップさん|実際に来てみてどんどん好きになった】
日本文化(アニメ、ドラマ)に関心が高い環境で育ち、子供の頃から日本に興味を持って、何度か来日し、ついには日本で就職を果たし暮らす内に益々日本を好きになったというイップさん。社会人になり初めて旅行で来た日本で出会った人達が印象に残ったそうです。
「中国と日本の関係・歴史がかなり複雑です。自分が中国人であることで、日本人がどういう風に自分のことを見るか少し心配しました。実際日本に来て、その時日本語があまりしゃべれなかったけれど皆すごく親切で。道に迷ったときに地図を見せながら説明してもらって。必要が無くても一緒に歩いてくれました。だからすごく感動しました」
【ナヒードさん|国のイメージは自分が変える】
ナヒードさんもイップさん同様に子供の頃から日本の映像作品に慣れ親しんでいたそうですが、そこには当時の国際情勢やイラン独特の文化も関係していました。
「イランは革命後にイラクとの戦争があり、海外から映画や物資が入らないときも日本との関係が良くて日本のドラマや映画がよく入ってきました。イランは仕事が土曜に始まるので休みが土日ではなくて、木金。金曜日には必ず長い映画をやっていて、それが日本語の映画でした。だから一時期イランで一番有名な日本人というと黒澤明監督さんでした」
日本人のご主人との結婚を機に来日したナヒードさん。イランの文化を発信する活動を始められた理由は何だったのでしょうか。
「イランで日本人と働いていたときは国籍が問題にならなかったけれど、日本に来た当時は日本人のイランに対するイメージが悪かった。90年代とかにイラン人が日本でやった悪いことがいっぱいあったので、イラン人と言ったら会話が途切れる感じ。そこで初めて自分が国籍で判断されるのを感じて辛かったですね。私という人として見なくて国籍を聞いてから判断して「あ、イランか」と一歩避けるとか。それが悲しくて、人と会う時には国籍を聞かれなければいいなと思うくらいで不安な気持ちがありました。でも後から考えれば、メディアがイランの悪いニュースばかりで、私でもこれだけのニュースを見たら同じ気持ちになるんじゃないかと思って。そこから自分が一人でも考えを変えなければいけないと思って、政治とかを別にして日常生活とか、料理とか、詩人とか文化とかイランのいい所を紹介する活動をし始めました。その中でだんだん日本人の方にも興味を持っていただいて、初めて“近づいてきました”という気持ちがあって。それはすごく嬉しくて、私が日本にいられるきっかけになったというか。この文化交流で友達も沢山できて今は幸せな人生を日本で過ごしています」
【ミヤモトさん|隠してきたルーツと向き合い始めた】
日本で生まれ育ったミヤモトさん。ご両親はネパール語を話しますが、家で教えられることはありませんでした。一時は自分のルーツへの関心を失ったものの、最近改めて興味を持ち始めたと言います。
「ネパール人と結婚してほしくないと言われて、(両親からは)日本語しか教わりませんでした。幼少期に親が離婚したタイミングでそれまで習っていた南アジア系のダンスを辞めてしまって、そこでネパールへの熱というか関心も閉ざされてしまったんです。学校では公立校に日本人の子と通いながら周りと違う面を感じて。「日本人でいたい」という思いで自分のルーツを隠していました。「どことのハーフなの?」と聞かれても「インドだよ」とか「私は日本だよ」とか適当なことを言ってごまかしてきました。でも最近、自分のルーツにも興味を持ちたいという思いに変わってきて。なぜかというと、帰国生や外国の方が多い高校に入って、自分のルーツ、アイデンティティをしっかり持っているのを見て影響を受けたから。それで最近はグンジさんと一緒に外国にルーツを持つ学生のコミュニティづくりをしていて、自分自身も周りも一緒に成長していけたらと思っています」
【グンジさん|一つに絞れないルーツ】
旅好きのお母さまの影響を強く受けたというグンジさん。日本、ドイツ、母と旅した東南アジア。グンジさんの半生からはルーツとは単に血ではないことが分かります。
「生まれも育ちも日本なんですけど、ドイツ人の母の影響が大きいです。家ではドイツ語で話したり、毎年ドイツに帰ったり。家族といえばドイツという色が強いです。私の見た目は父似で日本人に見えるので、ドイツに戻ると“私だけ日本人”という面で悩みました。さっきも触れたんですけど、母が旅好きで小さい頃は毎年タイなど東南アジアの、それもローカルな所を旅していました。でも日本に戻ってくるとそれらの土地は自分のルーツとは言えないんですよね。母とはドイツ語で話していたので、日本に戻ってきたときに日本語があまり出来なくなっていたり。自分のルーツというと“血”的なものもあるし、文化的なものや、育ってきた環境もあって悩みました。でも今は人間みんな同じでしょという感じで(笑)。色んなところに行くと、人間本質的にはあまり変わらないなと思って。今は普通の日本人の振りをした人間です」
グンジさんの話を受けたルネさんは、複数のルーツを持つ人ならではの「自分は何者なんだろう?」と悩みに共感。「僕は「地球人でいいや」と、ある地点で思うようになったけど(その地点に至るまでには)途中で色んなことがあるから。まだアイデンティティの旅をしているのかなと思いました。」と応えました。
パネラーの日本での生活に関する気づき、課題、提案
イップさん:(異文化を経験して分かったこと。)良い文化や悪い文化というものは無いです。同じ考え方でも場合によっていい結果にも悪い結果にもなると考えます。例えば、“周りに迷惑をかけない”こと。日本人は比較的ポイ捨てをしなくて、街がきれいです。コロナ禍では周りに感染させないようにできるだけマスクをつけます。しかし、職場で同僚に負担をかけないようにあまり休みを取りません。だからワークライフバランスは上手く取れない。もう一つの例として、“マニュアル通りに仕事をする”こと。だから電車の到着は正確。東京駅に着いた東海道新幹線の掃除は12分で終わって、すぐ折り返すことができます。しかし、マニュアル通りに仕事をするマインドが強ければ強いほど新しい発想はしにくくなってイノベーションは難しくなりますね。だから、文化は良いとも悪いとも言えません。そのため、異文化を体験するとき、「このやり方は良い」と思ってもそのまま真似するべきではなくて、理解したうえで自分のやり方を進化させた方がいいと考えます。
そして、異文化の理解には3つの段階があると考える。まず、「知る」。次に「分かる」。最後に「感じる」。例えば、日本独特の文化の土下座。まずどういう時に土下座をするか知ること。次に、なぜ土下座をするのか、土下座で何をもたらせるか分かること。土下座の役割の一つは、大きなミスをしたときに誠心誠意謝ること。しかし、その申し訳ない気持ちを心から感じられなければ上手く伝えられません。でも外国人にはそこまで中々できないです。だから異文化を理解する時に、まず知って、分かるように頑張って、時間をかけて経験を積みながら感じられるようになるしかないと考えます。
ルネさん:日本人はマナーも良いし、ルールを守るという能力もあるから臨機応変をどうつけていくかを極めればすごいのではないかと思っています。教育で変えられると思いますか?
イップさん:マインドは簡単には変えられないから教育だけでは難しいと思います。二つのマインドを持つことは難しいから、臨機応変は難しいです。日本らしさを大切にして、進化した方がいいです。
パネラーの日本での生活に関する気づき、課題、提案
【質問:「異なる常識、ルールを受け入れられない人に会ったことはありますか?」】
ナヒードさん:日本で友達になりやすい方は海外に行ったことがある人が多いです。私は日本で差別に遭ったことが少ないけれど、それは自分が周りとどう向き合うかも大切だと思っているからかもしれません。「私は差別される!」と思わずに、ポジティブに考えようとしています。
ルネさん:何をもって差別とするかの話にも繋がりますね。本を出版した時にインタビューで「差別が多くて苦労されたんじゃないですか?」と聞かれました。差別の解釈は皆違います。僕にとっての差別は「この建物に入ってはいけません」とか「この家に住んではいけません」といった法律的なものや生活が脅かされるものなんです。偏見、思い込み、勘違いは分かっていないだけだから差別に入れていない。
ナヒードさん:友達の話で、仕事を上手にしていて同僚から「日本人みたい」と言われたときに彼女はそれを差別と思ったんですね。フランス人の彼女からしたら、日本人はちゃんと仕事をするけれどフランス人はダメなの?と。でも彼女の話を聞く前、私は「日本人みたい」と言われたら誉め言葉だと思っていました。友達の話を聞いて、「あー、そういう考え方もあるんだな」と。
【“自分の子供じゃないみたい“外国人のお母さんたちの悩み】
ナヒード:国際結婚に憧れをもっていたけれど、子供が生まれてから日本で外国人の母として子育てするのは大変だと感じました。イップさんが仰ったように、マニュアル通りとかルールが多い。保育園の段階から、働いているお母さんなのに準備が多くて一時期悩みました。もう一つ、ミヤモトさんのお母さんがネパール語を教えないという話がありましたね。私も外で赤ちゃんに「静かにしなさい」とか声を掛ける時、自分の言葉(ペルシャ語)で言ったら周りが解らないので、「どんな母親ですか」と思われるのも嫌で日本語で言っていました。でも母が日本に来て3歳の娘と全く会話できなかったのを見たときに、これはいけないなと思ったんです。下の子も生まれていて私の時間は赤ちゃんに取られていて、しかも私の母も来て私とペルシャ語で喋っているから上の3歳の子にすごく負担があったと思う。「私を誰も見ていない」という。その時から自分の子とはペルシャ語で話さないといけないと思いました。
日本の社会の感じで育つと「恥ずかしいから送り迎えへ来ないで」と親に言う子どもが多いし、イランはハグやキスをする文化があるけれど日本ではそれも友達の前で絶対やったら駄目ということになる。そういうのを見て「私の子供だけれど私の子供じゃないみたい」と感じます。それが子供が大きくなるまでに小学校、中学校、高校といった段階であるのが、外国人のお母さんたちにとってすごく悩みだと思います。これに対しては、色々な方法で自分の文化を子供にも紹介して、話をして、お互いに理解するのが大事だと思います。
【ルーツに関する悩みを親に相談できない】
ミヤモトさん:少し前にネパールに行って来ました。父方のお祖母ちゃんに会ってきて、お祖母ちゃんは英語出来なくて私はネパール語が話せないので言葉が通じないんです。だからずっとハグしたり手を繋いだり、体で感情を伝える感じで言葉の面では困難が沢山ありました。自分はハーフとして、親とはルーツが違うので悩みが共有できないことが多いです。一人で悩むしかありませんでした。周りに似たようなルーツを持った子もあまりいないので、仲間を見つけるまでは自分で悩む。それで拗らせちゃうみたいなことが多かったです。
ルネさん:わかります。親とバックグラウンドが違うから、親に相談できないことが意外にあるんです。僕の妹・弟たちはカメルーンと日本のハーフ、でも父親は両親ともに日本人。お母さんもカメルーン人。自分がミックスの子供である体験をしたことが無いから、親が子供の気持ちが分かるようで分からない部分が沢山ある。親よりも同じような境遇の先輩の方が案外分かったりするようなことは感じていて。だからミヤモトさんとグンジさん達がやっている、同じ境遇の人達が集まれるコミュニティはこれから日本で大事になっていくと思います。
ナヒードさん:私も自分の子供達の気持ちを分かってなかったなと、ここ何年かになってやっと分かってきました。もっと早く分かれば役に立てて、子供もそんなに辛くなかったし私も辛くなかったと思います。
ルネさん:年を取ってから親の有難さに気づくこともあるから「あの時お母さん分かってくれなかったけど、お母さんなりに頑張ってくれてたんだろうな」っていうことが後で分かってきたりする。妹はお母さんとずっと仲が悪かったけれど、最近妹に子供が一人生まれてめっちゃ仲良くなっているんです。「やっとわかった」と言っているので、そういう日が来ることも期待しましょう。
ナヒードさん:日本で子供達に私の態度を非難されたけれど、今娘たちはイギリスにいて「ママみたいな人がいっぱいいるよ」と。
ルネさん:ママは変な人じゃなかったと(笑)。日本は世界でも比較的静かというか、表現を大きくする国じゃないから。
ナヒードさん:静かというか、日本人は相手のことをすごく気遣って、リスペクトする。外国人はどちらかというと自分中心の方が多いとは思います。私も外国人だからレストランで「ここに座って」と言われて「あそこの窓側でいいじゃないですか」と言ったら、子供達が「ママ、“ここで”と言われたらここに座るんだよ」と(笑)。日本人は「はい、わかりました」と相手のこともすごく考えてリスペクトして、違いますよね。
ルネさん:それもそうだし、世代や地域もあると思います。西側か東側かで日本といっても違ってくるし、僕が妹たちと話しても世代が違うと気遣いがすごい。他人に対する気遣いが今の子すごいです。世代間の差という意味でも多文化。同じ家で生まれても世代が違うということがあります。
【「部族語は興味ないの?」期待される“外国人”のイメージ】
ミヤモトさん:保育園、小学校、中学校の時の話で、子供の頃は世界というと日本、中国、アメリカ、後はいっぱいという感じで日本か外国かという風に分けられていました。私がハーフなのを知ると「じゃあ英語話せるの?」と言われて。運動神経良い、水泳が得意、家ではずっと外国語で話している、ナンとカレーが好きで納豆が嫌いでみたいな思い込みをされていました。けれど自分自身は日本で生まれ育ってきているから日本人だと思っていて。納豆も食べるし、英語は喋れないし。そういうことで周りから思われる自分と自分が思う自分とのギャップがすごく大きかったです「どっちに合わせたらいいんだろう?」と思った時期もあったし、期待に応えなきゃいけないと思って英語を勉強し始めた時期もありました。ルネさんはギャップがありましたか?
ルネさん:僕は見た目で外国人と分かるから、知らない人は外国人扱いをしてくる。英語を喋れないと「英語喋れないの?!」と笑ってくる人がいて、それが一番腹立った。おめえも喋れないだろ!って。僕はフランス語喋れるから、フランス語喋れるか聞いてこいよ!と思う。何で英語前提なの(笑)。カメルーンの部族語は分かるのに部族語は興味ないの?と。それが嫌になって僕も英語を勉強して、ある程度は喋れるようになった。自分のネガティブな部分をバネに変えて喋れるようになったから今良かったと思っているけれど、ハーフの子とか全員に「英語を喋れないとだめだ!」と強要するのはかわいそうだなと思うし違うなと思う。だから社会がもっと理解してほしいと思うし、そういう人がいることを伝えるしかないかなと思う。
ミヤモトさん:そうですね。私も今は良かったですど、当時は何気ない言葉を受けて家で泣くこともありました。周りが思う自分と自分のアイデンティティとのギャップの中でいかに自分を表現して見つけていくかというのが大事なのかなと思います。自分は自分なんだって思えることが大事。
ルネさん:それで悩んでいる子がもっと小さい子だったらどうする?アイデンティティに悩んでいる子だったら、ギャップを埋めるために誰かに相談したらいい?
ミヤモトさん:私だったら自分と同じような境遇にあるインフルエンサーの動画とかを見ます。“ハーフあるある”とか。そういうのを見ながら笑ったり共感したりすることで悩みを解消できたかなと思います。
ルネさん:今だったらSNSもあるから、似たような先輩がインターネットやYouTubeを見ればたくさんいるからそこを見れば安心する。その話を聞いていると、『アフリカ少年』という漫画は本当にいい漫画ですね。
一同:(笑)
ミヤモトさん:いい漫画です。本当に。皆一冊持って。
ルネさん:インフルエンサーとかを紹介してあげてアドバイスとかを見るのも大事だし、ここのようなコミュニティを親御さんが探してあげて連れて行ってあげるのがいいということですね。
【海外にルーツが無いと個性が無い?】
グンジさん:私の学校のクラスには「バックグラウンドの会」というものがあります。相手が誰であっても個人を知るのが面白いから、クラスにいるのはどんなバックグラウンドで育ってきたどういう人たちなんだろうというのを紹介する会です。その時驚いたことがあって、日本にルーツを持つ子が「自分は海外にルーツが無いから個性が無い」みたいなことを言っていました。人間一人ひとり面白くてそこに個性があるけれど、“多様性”や“個性”と言うと外国にルーツがあるとか外国に行ったことがあるといったイメージがかなり強くあるようだったので衝撃を受けました。自分のアイデンティティやルーツというのは自分の国だけでなく、育ってきた環境だったり、さっき出たように世代の話もあります。そういう皆がちゃんといるということを認識したら多様性は広がるんじゃないかと思いました。
ルネさん:自分は海外にルーツが無い普通の日本人だから個性が無いとう話を(僕も)日本の子から聞いたことがあるんです。びっくりして、そんなことないでしょと思ったんですけれど。個性が何かということが分からないのかな。
グンジさん:日本人の方が自己主張が弱いというイメージが個人的にあります。あと、何かを言う時には遠回しに言う文化もあるのかと思う。母と話しているとすごくダイレクトなんです。感情であっても、自分自身についてもダイレクトに話してくれて、自分がこういう人だというのがはっきりしている。私の外国人の友達は、自分はこういう人だというのを確立していて自分の意見をちゃんと言います。でも日本にルーツを持つ人は自分のルーツよりも他のことについて話す。これは自己主張が弱いからなのかなと思います。
ナヒードさん:それもさっきのイップさんのイノベーションが少なくなるという話とか、他の進歩している国と比べると日本の教育はクリエイティビティを伸ばさないところがあるのかなと。(私の)子供たちも高校を終えているので今はよくわからないですけれど、日本の学校にいたときにそういうことを少し感じました。ルールが多くて従わないといけないとか、ずっとそうだったら自分の発想とか自分からのクリエイティビティもある程度は無くなるんじゃないかと心配しました。日本の教育はちょっとこの辺が足りないかなと感じます。
ルネさん:僕も日本の学校で育っていて幼馴染もほとんど日本人ですけど、個性あるやつばかりでしたからね。だから日本人でも個性はあるけれど、それを分からない環境で育っているというのは、伝えてあげられる人が周りにいなかったんだろうと思います。
【質問「子供が異文化理解を深めるためのアイデアはありますか?」】
イップさん:一番いい方法は海外へ行って自分と違う方に会う機会を与えることだと思いますが、それは時間もお金もかかります。今の時代はやはりSNS、YouTubeとかを活かして海外の文化、自分と違う考え方・人がいることを伝えた方がいいと考えます。
ナヒードさん:今でも色んな学校がやっていますが、(学校にいる海外ルーツの)生徒のバックグラウンドの国を紹介したりとか文化を紹介したりとか、そういうのでもいいんじゃないかと思います。例えばドイツのハーフの子がいらっしゃるなら「今日はドイツのことを調べましょう」とか機会を作って、交流を深めるのがいいんじゃないかと思います。
ルネさん:他の国に偏ったイメージしか無いのがね、色々困るところで。ニュースにはネガティブな情報しか流れないから。そうじゃない、色んな人がいて色んな暮らしをしていることもちゃんと伝えることが大事だなと思います。そして、どうして世界がこんなに多様化しているのか、多様性によって僕らが受けている恩恵は何なんだろうと、それを伝えるために僕らが必要なことは何なんだろうということも併せて学んでいくと「私たちの社会はこういう社会なんだな」というのが分かるんじゃないかなと思います。